今回は鈴木結沙追悼公演なのだが、鈴木結沙こと結沙ポンとの思い出は簡単には語りつくせない。一言でいえば酒とタバコを愛した稀代の芝居好きだった。何しろ小学生の頃に友達と劇団を結成して座長に収まっていたのだそうな。小学生で劇団に入る人は特に珍しくもないが、劇団を作っちゃう人はまぁほとんどいないだろう。そんな子供のころからの夢を追い、亡くなる直前まで舞台に関わり続けた女優だった。
裏方としても評価は高く、結沙ポンが制作に入ると必ず黒字になる、すなわち無駄な支出を一切許さないということで「鬼の制作」の異名をとった。
子育ての間のブランクもあってプロの道には進まなかったが、芝居好きという点においては結沙ポン以上の人を私は知らない。
私が結沙ポンと出会ったのは、2008年のアルモニア・ヌォーヴァ公演オペラ『こうもり』。私も結沙ポンもオペラ歌手ではないことを考えると、ここでの出会いは奇跡としか言いようがない。
その後さらにオペラ『アドリアーナ・ルクヴルール』で共演し(この時の演出が今回の演出でもある加藤裕美子)、それが2010年に私が初プロデュースした劇団
シースルー霊界。公演『煙が目にしみる』出演のオファーにつながった。
結沙ポンには生前、私のつたない劇団運営を大いに助けていただき、事実上の副主宰だったので、彼女を失ったことは精神面だけでなく実務面でも大きな痛手で、私としては主宰を続けるのがかなりしんどい状況なのですが、やはり彼女の追悼公演をやらずにはいられないとの想いで今回の公演にこぎつけた次第です。
もっとも、観に来ていただくお客様にとっては私の芝居仲間が亡くなったかどうかは関係ないこと。皆様に喜んでもらえるよう少しでも良い作品に仕上げるべく全力を尽くしますので、皆様ぜひご来場ください。
劇団 シースルー霊界。主宰 たきざわ勝彦
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