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書下ろしコラム

2006年F1開幕戦テレビ観戦記

いよいよ2006年のF1がバーレーンで開幕した。
F1のルールは毎年多少なりとも変更されるのが常だが、今年は,予選方法が変わり、エンジン規定も変わり、レース中のタイヤ交換も許可されることになり、要するにかなり大きな変更の年となった。こうしたシーズンの序盤は波乱のレースが多いもの。そうでなくても、例年、開幕戦はリタイヤが多い。にもかかわらず、22台中リタイヤはたった4台だったことは嬉しい誤算といえるだろう。

さて今年の展望だが、各チーム、意外と実力が接近しているという印象だ。優勝したルノーのアロンソから11位までが同一周回。ちょっと前のF1では、優勝者が他の全車を周回遅れにするという独走レースもあったことを考えると、参加マシン22台中の半分が同一周回でレースをしているというのはかなりコンペティティブな状態と言え、実際、そこかしこで順位争いが繰り広げられる様子がテレビで中継されていた。
テレビではどうしても上位の争いに焦点が当てられる傾向にあることを考えると、おそらく、下位に於いてもテレビには映らない順位争いがあったはずで、今年はなかなか面白いF1になると期待される。
F1観戦は、テレビで見ているのと実際にサーキットに足を運んで生で観戦するのとではかなり異なる印象がある。テレビでは、順位やピットインの状況など情報量が豊富で、レースの状況全体が非常に把握しやすい。一方、生のレース観戦では情報量は非常に少なく、目の前を通過していくマシンがすべて。そして、スタンドが湧くのはやはりオーバーテイク(追い抜き)の瞬間だ。それはトップ争いの攻防だけでなく、下位争いであっても変わらない。
ということを考えると、「接近した実力」と「リタイヤの少なさ」という要素は大きなプラス材料。今年は例年以上にサーキットに足を運ぶ価値のあるシーズンになるかも知れない。

注目選手は、やはり、昨年のチャンピオンであるルノーのF.アロンソと、一昨年のチャンピオンであるフェラーリのM.シューマッハが筆頭。バーレーンGPでも、この両者の戦いは熱く、見応え充分だった。
加えて、予選の失敗で最後尾の22番手スタートながら3位に這い上がったマクラーレンのK.ライコネンにも強さが感じられた。
安直な予想ではあるが、バーレーンGPで表彰台に上ったこの3人とそのチームが今年の本命だろう。

そして大穴は、新人ながらファステストラップを叩きだしたウィリアムズのN.ロズベルグ。ファステストラップというのは純粋にここ一発の速さを示す勲章であり、それを新人が獲得したことは驚きとしか言いようがない。レースは経験もモノを言うので、今年のシリーズチャンピオンは無理としても、全18戦のうち何回かはポールポジション(予選1位)を取るだろうし、デビュー年で初優勝という快挙もありえる。さらに、来年か再来年にはチャンピオンになっている可能性が充分あると見た。

優勝争いには関係ないが、意外とがんばったチームはトロロッソ。戦前の雑誌などによる情報ではお世辞にも戦闘力があるマシンとは思えないのだが、V.リウィツィが優勝したF.アロンソと同一周回でレースを走り切った。このチームはレッドブルの二軍のようなものなのだが、なんと一軍のレッドブルより速かったのである。
エンジン規定の変更に伴い、その移行期間として暫定的に制限付で旧規定のV型10気筒エンジンが認められている唯一のチームだが(本来の新規定はV型8気筒エンジンのみ)、この制限が甘く、現状ではV10有利かもという噂があった。トロロッソの活躍はこの噂が事実だったことを証明してしまったようだ。
とは言え、それでもちょうど真ん中の11位だから、下位チームであることには変わりがないが……。

一方、ジャパンパワーのトヨタとホンダは期待はずれに終わった。
ホンダは順位だけ見ると、J.バトンが予選3位、決勝4位とまずまずだが、フェラーリとルノーの優勝争いには全く絡めず、マクラーレンにも力負けしていた。今年も善戦はするだろうが、シリーズチャンピオン争いをするにはまだまだ力不足のようだ。
トヨタに至っては、「今年こそ初優勝を!」と鼻息荒かったにもかかわらず、R.シューマッハが14位、J.トゥルーリが16位と惨敗。しかも、レース後のドライバーのコメントを見ると、「マシンが不調だったわけではないのに遅かった」という。不調の箇所があればそこを直せば速くなる可能性があるが、そうでない場合、マシン全体の能力が低いということを示しており、問題は深刻だ。
トヨタはミッドランドというチームにエンジンのみ供給しているが、このミッドランドもかなり遅いことを考えると、惨敗の最も大きな要因はエンジンの馬力不足にあるのかもしれない。

最後に、新参チームのスーパーアグリに触れておかなければならないだろう。
他のチームは、新チームと言えどもどこかの二軍であったり、チームオーナーが変わったことでチーム名が変わっただけの実は古参チームというケースばかりだが、このスーパーアグリは日本人の元F1ドライバー鈴木亜久里がゼロから興した文字通りの新チーム。しかもF1参戦表明から約4ヶ月、参戦許可を得てから約1ヶ月半という急造チームだ。鈴木亜久里にはそれなりの人脈と金脈はあったのだろうが、大昔のF1初期ならともかく、近年ではこんな急造チームは見たことがない。
しかしながら2台のマシンをスタートさせ、佐藤琢磨が見事に完走を果たした。完走した18台中18位。しかも17位の選手にすら2周も差を付けられての鈍亀だったが、ゴールの瞬間、スタッフがまるで入賞でもしたかのように喜んだというのもうなずける。おそらく、このチームのスタッフは、他のどのチームよりタイヘンな思いをして参戦にこぎつけたに違いないからだ。もちろんそのタイヘンさはフェラーリやルノーとは違った種類のモノだろうが、ある意味、最もがんばったチームと言えるかもしれない。
しかし、マシンを見るとスポンサーがほとんどない。シーズン途中で資金不足により参戦断念という事態にならないことを祈る。

2003.03.13. たきざわ勝彦


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