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こんなに便利じゃなくてもいいじゃないか |
今から20年前、正月と言えばどのお店も閉まっていて、開いているのは、お年玉を貰った子供狙いのおもちゃ屋さんと、せいぜいボーリング場ぐらいだった。私は大学時代、伊勢丹の宣伝部でアルバイトしていたが、正月三賀日は完全休業。地元の商店街もゴーストタウン状態で、年末に食材を買い忘れようものなら食うものにも困る状況だった。当時は「正月難民」という言葉があった。
しかし今はどうだ。コンビニだけでなくデパートもやっているし、牛丼屋をはじめチェーン店は軒並み通常営業.。食うに困ることがないばかりか、遊ぶに困ることもない。
確かに便利になった。
しかし、これでいいのだろうか?
店が開いているということは、当然、正月早々そこで働かなければならない人がいるということ。デパートであれば、その社員やパートさんはもちろんのこと、納入業者や、警備会社や、清掃業者といった関連する会社の人達も働かなければならない。そうした人々には正月の団欒はない……。そういった犠牲の上に、この便利さは成り立っていると言える。
便利さがある意味でアダになっていると思うのは正月だけではない。
電車のダイヤは改正される度に夜遅い電車が増える。確かに便利ではある。だが、これによって辛くなるのは、電車を運行している電鉄会社の社員だけではない。
普通の会社なら、どんなに忙しくても「終電までには帰ろう」という意識があると思うが、終電が夜11時ならその時間には帰れるのに、それが深夜0時になったら、その時間まで会社にいなければならなくなることもでてくる。事実上の労働強化だ。
FedEx Kinko's という、コピーやプリントアウト、製本などをしてくれる会社がある。設立からまだ15年ちょっとの会社だが、見る見るうちに店舗数が増えた。ほとんどの店舗が24時間営業なので、企画書や会議資料などを作っていて、「このペースじゃ明日の朝イチの会議に間に合わね〜!」となったら、最後に頼りにするのはここ。で、徹夜で仕上げて会議に直行という経験をした人は多かろう。
では、Kinko'sができる前はどうしていたかと言えば、やっぱり朝イチの会議はあったわけで、ほとんどの場合、皆どうにか前日までにどうにか企画書や資料を仕上げて夜は家に帰って寝ていたのである。
一般論としては便利な方がいいに決まっている。しかし、果たしてそれは万民にとって本当の幸せなのか?
便利さを求めることで、もしかしたら自分達の首を絞めているのかもしれない、と思う。
2007.01.31. たきざわ勝彦
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